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    が、その時、彼はすぐ傍でさつきから盛子がひろげたり畳んだりしている大きな紅い紙の袋みたいなものに目をとめた。

    「今日はえらい早いお帰りだね」

    「あ、お帰んなさい」

    義母は明日も片づけ仕事が残つているので泊つて行くことになつた。

    入浴は快適だったが、あがる時が苦痛であった。越して来たのが冬だから、湯から上ると、ガタガタふるえる。とりわけ寒い日は、全身をふく余裕がなく、夢中で着物をひッかぶっていたりした。

    「あゝ、よからう。大賛成ですよ」

    「印度洋の方では、何とかいふ軍艦がたつた一隻で荒あばれまはつているんだつてね。それがちつとも捉つかまらないと云ふから面白いねえ」

    それは正文にかゝりつけの患家だつた。

    「ほう。元気だね。ハッパでやられたかね」

    練吉は眠気から覚めたやうに、

    と、舌ざはりの悪いものでも口にしたやうな調子で、練吉はぽつんと云つた。

    答へながら、彼は紅くなつていた。

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